1 審査請求の審理の流れ

審査請求書が提出された後の一般的な審理の流れは、次のようになっています。

審理の概要図

審査請求書が提出された後の一般的な審理の流れ

出典:国税不服審判所ホームページ(https://www.kfs.go.jp/)

2 審査請求の却下の裁決

審査請求が却下されるのは、次のような場合です。

審査請求の対象が処分でないとき
例えば、延滞税のお知らせなど、処分に該当しないものを審査請求の対象としたとき

審査請求の対象が審査請求をすることができない処分であるとき
例えば、その審査請求が、再調査の請求についての決定の取消しを求めるものであるとき

審査請求の対象となった処分が存在しないとき
例えば、審査請求の対象とされた処分がはじめから存在しないとき

審査請求の対象とした処分が、裁決前に消滅したとき

審査請求の対象となった処分が審査請求人の権利又は法律上の利益を侵害するものでないとき
例えば、納税額を減少する更正処分(更正の請求についてその一部を認める更正処分を除く。)を審査請求の対象としたとき

審査請求の対象となった処分について、既に国税不服審判所長の裁決(却下の裁決を除く。)がされているとき

審査請求人が行った再調査の請求が不適法であるとき
例えば、再調査の請求が法定の再調査の請求期間経過後になされたことを理由として却下されたものについて、審査請求をしたとき

審査請求が正当な理由なく法定の審査請求期間経過後にされたとき

審査請求の対象となった処分について、審査請求人が直接自己の権利又は法律上の利益を侵害された者でないとき

不適法な審査請求について相当の期間を定めて補正要求がされた場合において、当該期間内に補正されなかったとき

 答弁書の送付

形式審査の結果、適法な審査請求であると認められる場合や、適法な審査請求かどうかの判断に審理を要すると認められる場合には、原処分庁に対して「答弁書」の提出を求めます。

この答弁書には、審査請求の趣旨及び理由に対応して、原処分庁の主張を記載しなければならないことになっています。

具体的には、審査請求の趣旨に対応して、いかなる内容の裁決を求めるかが明らかにされるとともに、審査請求の理由により特定された事項に対応して、原処分庁の主張が具体的に記載されます。

国税不服審判所長は、原処分庁から提出された答弁書の副本を審査請求人に送付します。

3 担当審判官等の指定の通知

国税不服審判所長は、審査請求に係る調査及び審理を行わせるため、担当審判官1名及び参加審判官2名以上を指定します。

指定された担当審判官は、参加審判官とともに合議体を構成し、その合議によりその審査請求の調査及び審理を進めることとなります。

国税不服審判所長は、指定した担当審判官及び参加審判官等の氏名及び所属等を書面で審査請求人に通知しますので、審査請求人は、担当審判官に対して具体的な主張、立証等を行うこととなります。

例えば、主張の追加及び変更、反論書及び証拠書類等の提出、口頭意見陳述の申立て、証拠書類等の閲覧・写しの交付の請求等は、担当審判官に対して行います。

4 反論書・証拠書類等の提出

審査請求人は、送付された原処分庁の答弁書に対する反論を記載した反論書を提出することや自らの主張を裏付ける証拠書類等を提出することができます。

また、原処分庁も処分の理由となった証拠書類等や審査請求人の反論書に対する意見を記載した意見書を提出することができます。

5 口頭意見陳述の申立て

審査請求人は、自らの主張を書面で提出するほか、口頭で意見を述べることができます。

担当審判官は、審査請求人から口頭意見陳述の申立てがあった場合には、原則として、その機会を与えなければならないこととされています。

担当審判官は、口頭意見陳述の機会を設ける場合には、期日、場所を指定して審査請求人に通知するとともに、原処分庁の担当者にも原則として出席を求めます。

審査請求人は、口頭意見陳述の際には、口頭で意見を述べることができるとともに、担当審判官の許可を得た上で、原処分庁の担当者に質問をすることができます。

6 閲覧・写しの交付の請求

審査請求人は、原処分庁から担当審判官に提出された処分の理由となった証拠書類等や、担当審判官が原処分庁等から調査により提出を受けた資料等の閲覧を求めることができることに加え、それらの写しの交付を求めることができます。

また、原処分庁も、審査請求人が提出した証拠書類等や、担当審判官が調査により収集した資料等の閲覧・写しの交付を求めることができます。

担当審判官は、第三者の利益を害する恐れがあると認めるとき、その他正当な理由があるときでなければ、その閲覧・写しの交付の請求を拒否できないことになっています。

写しの交付には、用紙1枚につき10円の手数料がかかり、収入印紙で納付します。

なお、証拠書類等の写しの交付に代えて、閲覧請求人等が持参したカメラで撮影することもできます。その場合には手数料はかかりません。

7 担当審判官等による質問、検査等

調査及び審理に当たっては、審査請求人及び原処分庁から証拠書類等が積極的に提出される必要がありますが、提出された証拠書類等のみでは事実解明に不十分な場合もあり、また、当事者から提出された証拠書類等の中には確認のための調査を必要とするものもあります。

このように審理を行うため必要があるときは、担当審判官は、審査請求人・原処分庁の申立てにより又は職権で質問、検査等を行います。

具体的には、次に掲げる行為をすることができます。

審査請求人若しくは原処分庁又は関係人その他の参考人に質問すること

上記1の者の帳簿書類その他の物件について、その所有者、所持者若しくは保管者に対し、その物件の提出を求めること又はこれらの者が提出した物件を留め置くこと

上記1の者の帳簿書類その他の物件を検査すること

鑑定人に鑑定させること

8 審査請求の審理手続の終結

 担当審判官は、必要な審理を終えたと認めるときは、審理手続を終結し、審査請求人及び原処分庁にその旨を文書で通知します。

 担当審判官が、審理手続を終結すると、審査請求人及び原処分庁は、証拠書類等の提出等ができなくなります。

9 審査請求の裁決

調査及び審理が終了すると、合議体を構成する担当審判官と参加審判官との合議により議決が行われます。議決がされると、国税不服審判所長は、合議体の議決に基づいて裁決を行います。裁決の内容は、「裁決書謄本」により審査請求人と原処分庁の双方に通知されます。

なお、原処分以上に審査請求人に不利益となるような裁決はできないことになっています。

 (1) 審査請求の裁決の態様

A. 全部取消し

審査請求人が原処分の全部の取消しを求める場合において、その主張の全部を認めたときにする裁決

B. 一部取消し

審査請求人が原処分の全部の取消しを求める場合において、その主張の一部を認めたとき、又は、審査請求人が原処分の一部の取消しを求める場合において、その主張の全部又は一部を認めたときにする裁決

C. 変更

審査請求人が原処分の変更を求める場合において、その主張の全部又は一部を認めたときにする裁決

例えば、次に掲げる処分についての変更がこれに当たります。
耐用年数の短縮に関する処分
相続税額及び贈与税額の延納条件に関する処分
納税の猶予に関する処分

D. 棄却

審査請求人が原処分の取消し又は変更を求める場合において、その主張を認めなかったときにする裁決

E. 却下

審査請求が法定の不服申立期間経過後にされたものである場合その他不適法であるときにする裁決

(2) 裁決の拘束力

裁決は、関係行政庁を拘束するので、原処分庁は裁決に不服があっても訴えを提起することができません。

10 審査請求の裁決をへても不服がある場合

審査請求人は、裁決の結果、なお不服がある場合には、裁決があったことを知った日の翌日から6か月以内に裁判所に訴えを提起することができます。

また、審査請求がされた日の翌日から起算して3か月を経過しても裁決がされないときは、裁決を経ないで訴えを提起することができます。この場合、訴訟とは別に、引き続き国税不服審判所長の裁決を求めることもできます。

※以上は、平成28年4月以降の処分について記載しています。
出典:国税不服審判所ホームページ(https://www.kfs.go.jp/

執筆者紹介

・税理士、CFP®認定者、1級ファイナンシャル・プランニング技能士
・国税庁、国税局、国税不服審判所等に勤務後税理士登録。
・著書 「平成3年版 税務相談事例集」、「平成14年版 法人税決算と申告の実務」、「平成15年版 図解法人税」、「平成15年版 減価償却質疑応答集」(以上、大蔵財務協会、共著)、「はじめての法人税」(日本法令、内容確認者)

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