【税務調査の落とし穴?】死亡保険金の収益計上時期にご注意を
〜税理士が解説する裁決事例と節税のヒント〜
こんにちは。税理士の吉田茂彦です。今回のブログでは、法人経営者や財務担当の皆様にとって関心の高い「死亡保険金の課税時期」について、令和6年2月26日に国税不服審判所で出された最新の裁決事例を取り上げながら、節税やリスク管理の観点から分かりやすく解説します。
キーワードは「節税」。実務でよくある法人保険に関する重要なポイントですので、ぜひ最後までご覧ください。
■ 裁決の概要:保険金の計上時期は「死亡日」か「支払通知日」か
この事案では、建設業を営む法人が、旧代表者の死亡を受けて生命保険会社から保険金を受領したことに端を発します。契約者・受取人は法人、被保険者は旧代表者という一般的な法人契約でした。
原処分庁(税務署側)は「旧代表者が死亡した令和3年12月に保険金請求権が確定した」と判断し、当該年度の法人税申告において保険金を益金に計上していなかったことを問題視して、更正処分を行いました。
これに対し法人側は、「実際に保険会社から保険金の支払通知があったのは翌事業年度であり、その時点で初めて収益として確定した」と主張し、計上時期の違いが争点となったのです。
■ 審判所の判断:実務的な処理が認められた!
審判所は納税者の主張を全面的に認め、原処分庁の更正処分を**「全部取り消し」**とする判断を下しました。理由としては、以下のような点が挙げられます:
- 保険金は請求書や医師の診断書など複数の書類を整えた上で、保険会社の審査を経て初めて支払われるものであり、死亡時点で「無条件に確定」するわけではない。
- 死亡から保険金請求までに一定の期間を要したのは、葬儀や代表者交代など事業継続上やむを得ない事情によるものであり、不自然な遅延ではない。
- 法人税法第22条第4項が定める「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」に則って、支払通知日に収益計上した法人の処理は妥当である。
このように、**「実現主義」「経済実態」「公正妥当な処理」**が重視された判断であり、実務においても非常に参考になる事例です。
■ 節税と税務調査リスクの分かれ目は「いつ収益を認識するか」
今回のケースは、法人保険の扱い方や収益計上のタイミングが、思わぬ税務リスクにつながることを示しています。節税を狙ったつもりが、時期の判断を誤ったことで「過少申告加算税」の対象になりかねないのです。
特に、保険金や助成金、退職金など「収益の認識時期に幅があるもの」は、恣意的な処理と見られないよう、税理士による事前のアドバイスが不可欠です。
また、法人保険の目的が「死亡退職金の支払資金の確保」である場合、支出と収入のバランス(費用収益対応の原則)にも配慮が必要となります。法人税務は、単なる利益計算ではなく「ストーリーとして整合性が取れているか」が重要なのです。
■ 税理士としてできること
当事務所では、保険金や役員退職金などの計上時期の判断について、会計・税務・実務の三面から助言を行い、節税と税務調査リスクの両立を支援しております。
法人保険をどう活用すべきか悩まれている方、死亡保険金の処理に不安を感じている方、あるいは税務調査で否認リスクを抱えている方も、どうぞお気軽にご相談ください。
「税理士=決算や申告をする人」ではなく、「経営判断の土台を支えるパートナー」として、貴社の財務体質強化に貢献させていただきます。
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