【社員による不正と重加算税の判断】
~節税を考える前に、リスク管理も大切です~
皆様、こんにちは。
本日は、「節税」という観点から少し角度を変えて、社員による不正行為が発覚した場合の法人税務上の取扱いと重加算税のリスクについて、実際の裁決事例(平成23年7月6日裁決)をもとに解説いたします。
■ 社員の不正でも「益金」が発生することがある?
法人税では、社員による詐取や着服行為が発生した場合、その被害額は「損失」として損金算入されると考えられがちです。しかし、問題はそれだけではありません。
税務署は、「損害賠償請求権が発生した」として、その金額を「益金」に計上するべきだと主張してくることがあります。
実際の裁決では、次のような判断が示されました:
- 社員による不正行為で損害が生じた時点で、会社には損害賠償請求権が発生。
- よって、その損害賠償請求権の金額を、その年度の益金に計上する必要がある。
- ただし、加害者が「社外の第三者」であるようなケースでは、実際に回収できる見込みが立った時点での計上でもよい。
本件では、詐取を行ったのが会社の使用人であったことから、「第三者」ではないと判断され、当該事業年度に益金として計上すべきとされました。
さらに注目すべき点は「重加算税」の判断です。
税務署は、不正を行った社員の行為を「法人の仮装・隠ぺい」と同視し、重加算税を課してきました。しかし、審判所はこれを否定しました。
- 使用人は役員でもなく、経理の責任者でもない。
- 会社の内部統制に問題があったとしても、不正は個人の独断によるものであり、法人の意図的な行為とはいえない。
つまり、会社として意図的に隠したわけではない以上、重加算税は課されないという判断が下されたのです。
■ 節税とリスク管理の両立を
この裁決から学べることは、単に「節税策」を講じるだけでなく、内部統制やリスク管理の整備も、税務上の安全対策であるということです。
節税だけに目を向けていて、帳簿管理や購買ルールに抜けがあると、不本意ながら「損害+益金認定+税務調査+加算税」といった悪循環に陥ることがあります。
■ おわりに ~税務リスクも「節税」の一部です~
当事務所では、法人税の節税対策だけでなく、重加算税リスクの検討、社員の不正防止策の構築支援も行っております。
特に、
- 使用人が行った不正行為の税務的取扱いに関する判断
- 過年度の誤った益金・損金処理の見直し
- 税務調査対応のセカンドオピニオン
については、元国税不服審判所国税審査官の経験を活かし、実務的かつ防御的観点からアドバイスしております。
「税務署から指摘されて初めて気づく」のではなく、事前に手を打つことが、最大の節税です。
お気軽にご相談ください。
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