裁決事例に学ぶ:工事代金に含まれた「寄附金」の認定とその影響
今回は、令和6年12月10日に出された国税不服審判所の裁決事例をご紹介します。法人が関与する不動産取得に関する取引のうち、「資産の取得価額に計上すべきか否か」が争点となった事案です。この裁決は、固定資産の取得に関する支出が実質的に「寄附金」に該当すると判断された点で非常に注目されます。
裁決の概要
ある農業法人(以下「請求人」)が、関係会社を通じて管理棟やビニールハウスを建築し、その工事費用や設計費用を固定資産の取得価額として計上していました。しかし、税務調査の結果、支出の一部が実質的に関連法人への寄附にあたるとされ、法人税の更正処分や青色申告承認の取消処分、重加算税の賦課処分がなされました。
この処分に対し、請求人は審査請求を行い、寄附金ではないとの主張をしましたが、結果的に以下のような判断が下されました。
審判所の判断ポイント
① 工事代金に含めた支出のうち、一部は「寄附金」と認定
請求人は工事業者に支払った工事代金の一部を、その工事と無関係な関連会社に振り込むよう指示していました。審判所は、当該金額は反対給付(対価)が認められず、経済的実質から「対価性なき贈与」、すなわち法人税法上の寄附金と判断しました。
② 「仮装」に該当し、重加算税と青色取消の要件も満たすと判断
寄附金にあたる金額を工事代金として装った契約書を基に減価償却費や圧縮記帳、特別償却準備金を計上していたことから、「仮装」が認定され、重加算税が課され、かつ青色申告の承認も取り消されました。
③ 一部の支出については「対価性あり」と認められた
一方で、関連会社が実際に組立作業や資材の提供を行っていた部分については、対価性が認められ、寄附金には該当しないと判断されました。
税務的な教訓
この裁決事例から得られる教訓は以下のとおりです。
- 形式だけではなく実質で判断される
請負契約書が存在していても、その実質が贈与であれば「寄附金」とされます。帳簿や契約書だけでなく、実態を説明できるよう備えておく必要があります。 - 関連会社間取引は特に慎重に
資金の流れや業務内容が曖昧であると、寄附金課税や重加算税、最悪の場合は青色取消まで発展します。 - 補助金事業は特に目をつけられやすい
今回の事案も補助金を活用した建物取得が契機となっています。公的資金が絡む事業では、契約・支払・実績の整合性を第三者が見ても説明できる形で整備しておくことが求められます。
最後に:節税とリスク管理のバランス
私たち税理士の使命は、税務リスクを把握したうえで、適正な節税を支援することにあります。節税と称して実態のない「名義貸し」や「資金迂回」をしてしまえば、節税どころか青色取消や重加算税という重大な結果を招きかねません。
特にグループ企業間の建築工事や業務委託などでは、対価性の裏付けと実態証拠の整備が不可欠です。
ご不安がある場合は、お気軽にご相談ください。節税と同時に、「後で否認されない仕組み」を作ることが、安定した経営につながります。
※本記事は令和6年12月10日国税不服審判所裁決(寄附金認定および青色申告取消等)を基に、解説・整理を行ったものです。


